診療案内

理学療法部門

理学療法部門では、年間約5,000件の新規処方があり、主に運動器疾患、心大血管疾患、脳血管疾患、呼吸器疾患に対応しています。また、長期臥床・安静後の廃用症候群、小児疾患、がん等、幅広い疾患にも対応しています。

現在、理学療法部門は4つのチーム制で診療を行っており、脳神経チーム、外科周術期チーム、血液腫瘍内科チーム、心臓血管チームに分かれています。それぞれのチームは専門性を持ち、より高度なリハビリテーションを提供することを目指しています。また、定期的にチームカンファレンスや勉強会を行いながら、より質の高いリハビリテーションを提供するために日々研鑽しています。

1 │ 整形外科領域

整形外科分野では、主に股関節・膝関節・足関節の人工関節置換術や股関節・膝関節の骨切り手術、四肢・躯幹軟部腫瘍摘出術、脊椎疾患に対する脊椎固定術、椎弓切除・椎弓形成術など、術後の理学療法を中心に行っています。早期の社会復帰を目指すため、術後翌日よりリハビリテーションを実施しております。最先端の知識・技術・治療機器を用いて治療を行っています。

2 │ 脳神経領域

脳神経領域では、脳神経外科(脳腫瘍、脳血管障害、てんかん術後)、脳神経内科(運動ニューロン疾患、多発性硬化症、免疫介在性・炎症性ニューロパチー、重症筋無力症)、脳血管内科(脳卒中、神経救急疾患)の患者を中心にリハビリテーション介入しております。生活の質(QOL)の改善と維持を目指し、病棟スタッフや多職種と連携しながらリハビリテーションを実施しております。

3 │ 外科周術期、呼吸器領域

外科周術期・呼吸器領域では、第一外科、第二外科、耳鼻咽喉科を中心に、外科手術前後の理学療法や、呼吸器内科疾患に対する理学療法を実施しています。食道癌手術については、周術期支援センターと連携して術前の呼吸指導や運動指導を行い、術後はICU退室後から早期離床を開始し、入院中のリハビリテーションを実施しています。また、臓器移植術(肝移植術(生体・脳死)、脳死肝腎移植術、脳死小腸移植術等)前後のリハビリテーションを、多職種と連携して実施しています。

4 │ 心臓大血管領域

心臓大血管領域では、入院・手術からの機能回復や日常生活動作の向上を目的とした個別療法や、再入院や再発予防のための運動耐容能向上を目的とした集団運動療法など、超急性期から退院支援期までのシームレスなリハビリを実施しています。また、九州で唯一の心臓移植実施施設でもあるため、重症心不全患者に対しては、植込型補助人工心臓治療や心臓移植術後の患者に対するリハビリテーションも実施しています。

5 │ 血液腫瘍領域

造血細胞移植前後は、数週間にわたって安静を余儀なくされ、身体活動量は大幅に制限されることがあります。さらに治療過程で薬剤性の心機能低下やミオパチーなどの症状を合併することもあり、身体機能低下のリスクが増加し、退院後の生活の質に大きく影響を及ぼします。当院では、成人造血細胞移植が実施される病床数は32床あり、廊下やナースステーションを含め、病棟全体がクラス10,000の環境を実現しており、さらにリハビリ器具を設置したスペースも確保しています。限られた生活空間の中で移植治療中の活動性や身体機能低下の予防・改善を目的に、造血細胞移植患者全員に運動療法を実施しています。

また、近年では難治性の悪性リンパ腫および白血病に対する治療として保険承認されたCAR-T細胞療法を施行される患者様に対しても、リハビリテーション介入を実施し、治療後の早期退院や社会復帰に向けてサポートを行っています。

6 │ 救急救命領域

高エネルギー外傷、急性脳血管疾患、重症呼吸不全、急性冠症候群、敗血症性ショック、熱傷など、成人や小児問わず、多様な重症疾患に対応できるよう、脳神経、周術期、心リハチームから各1名ずつ、計3名の理学療法士を専任スタッフとして配置しています。また、鎮静及び鎮痛薬の調節、抜管トライアル、せん妄の評価、栄養サポート、不要なルートの整理、嚥下及び口腔衛生状態、社会的支援などについて、多職種で協議し、救命の先を見据えた社会復帰を目指す包括的な医療を提供しています。

8 │ 集学的痛みセンター

2018年に九州地区で厚生労働省のモデル事業として、診療連携と治療を行うための拠点病院として集学的痛みセンターが設立されました。当センターでは、理学療法士をはじめ、作業療法士、心療内科医、麻酔科医、整形外科医、リハ科医、歯科医、公認心理師、看護師などが協働しており、隔週のカンファレンスを通じて多職種で患者の日常生活動作状況や心理社会面の変化、治療目標などの情報共有を行い、集学的な診療に努めています。

【作業療法部門】

作業療法部門では、6名のスタッフが、上肢の機能障害や日常生活動作能力の低下に焦点を当てた介入を主に行っています。その対象は、上肢整形外科疾患(肩腱板断裂や各種骨折・関節変形症、腱・神経損傷、関節リウマチなど)の術後や乳癌や頭頚部癌の術後、脳腫瘍などの脳血管疾患の術後、神経難病など多岐にわたります。

1 │ 整形外科領域

作業療法では主に頚部・上肢の整形疾患を中心に介入しています。肩腱板断裂に対しては、年間〇例程度の手術が行われており、術後翌日からリハビリを行っています。また、変形性関節症に対して、肩や肘、指の人工関節置換術も行われています。

2 │ 脳血管疾患

脳梗塞・脳出血から脳腫瘍まで手術の有無に関わらず、上肢の麻痺や高次脳機能障害が生じ、日常生活に支障をきたしている方を対象に、上肢機能の向上や日常生活動作能力の改善を目的に、早期より介入しています。

3 │ 乳癌

当院では主にリンパ節郭清術を併用した方を対象に、肩関節の可動域改善やリンパ浮腫発症予防の観点から、可動域訓練や日常生活を送る上での注意点等の指導を行っています。

4 │ 頭頚部癌

主に頸部郭清術を併用した方が対象で、術後に生じる可能性の高い副神経麻痺に対し、上肢機能の維持・改善を目的に介入を行っています。

5 │ 神経難病

対象疾患がALSや脊髄小脳変性症、CIDPなど大半の病気が進行性であることが特徴です。そのため、病期や症状に合わせたプログラムに加え、福祉用具の適応や環境設定などADL面でのサポートを行っています。

6 │ リンパ浮腫

専門の資格を持ったスタッフが治療にあたります。主に、リンパ浮腫患者のLVAに対して、術前からの周径測定や体成分分析(In-Body)、圧迫療法下での運動療法に加え、生活指導や復職指導を行い、退院まで関わります。

言語聴覚部門

九州大学病院の言語聴覚士は、耳鼻咽喉科・歯科・リハビリテーション部に分かれて、それぞれの高い専門性を活かして臨床業務を行っています。リハビリテーション部では、失語症や高次脳機能障害領域を専門とする2名の認定言語聴覚士が、患者様のことばやコミュニケーションの問題に対応しています。

1 │ 失語症

聞く、話す、読む、書く、計算の機能が低下する「失語症」のリハビリテーションや、ことばと関連する「高次脳機能障害」の検査を行っています。

2 │ 構音障害

舌や唇など、話すために必要な器官の問題で起こる「構音障害」や、「顔面神経麻痺」に対するリハビリテーションを行っています。

主治医や看護師,薬剤師,地域医療連携センター,歯科衛生士,栄養士など,患者様に関わる様々な職種と定期的にカンファレンスを行い,時には診療科の垣根を超えて協力し合いながら,患者様の実用的なコミュニケーションのために努めています.